「ミルトン・ナシメント
〜 悠久のサウンド・メーカー」

黄金郷ミナス・ジェライスの山々の響き、谷間を駆け抜ける鉄道、小さな町の聖歌隊、地上から宇宙にいたる色んなサウンドがミルトン・ナシメントの「最も洗練された野生音楽」を織り成している。彼がワールド・ミュージックに与えた影響は計り知れない。

ミルトンは1942年にリオで生れるが、幼児のころ両親を亡くし、養親とともにミナス・ジェライス州のトレス・ポンタスという小さな町に移る。4歳のときから子供用アコーディオンを弾き、あの独特の透き通るような声で歌っていたという。13歳になると盟友のヴァグネル・チーゾとパーティ・バンドを結成し、音楽の世界に足を踏み入れる。

20歳で州都ベロ・オリゾンチに行き、昼は会計学を勉強、夜はライブ・ハウスで演奏する。この時期にボルジェス兄弟や、いずれミルトンの名曲の殆どの作詞を手掛けるフェルナンド・ブラント等と知り合い、一緒に曲作りに励むようになる。これが、後にMPB史に名を残す音楽集団「クルービ・ダ・エスキーナ(街角クラブ)」の発端といわれる。

65年には音楽に専念し、リオに活動の場を移す。翌年、当時注目度ナンバー1だった女性シンガー、エリス・ヘジーナが彼の曲「Cancao do Sal」を録音し脚光を浴びはじめる。そして67年に作曲した信じられないほど美しい曲「Travessia Travessia Travessia 」がTV局の音楽フェスティバルで入賞し、おかげでファースト・アルバム『Milton Nascimento』(CD版は『Travessia』)をリリース。このとき審査員を務めたボサノバの名アレンジャー、エウミール・デオダートに連れられアメリカに渡り、セカンド・アルバム『Courage』(68)で早々と海外デビューを果たす。

69年に帰国してからはミナスの"街角仲間たち"と積極的に活動する。この時期に「Clube da Esquina」、「Para Lennon e McCartney」などの曲が生れ、ロー・ボルジェスとの共同作『Clube da Esquina』(72)でとうとう彼等の音楽スタイルが結実する。アルバムでは「Nada Sera Como Antes」、「Cais」、「O Trem Azul」をはじめに、すべての曲から溢れ出る創造性的なサウンドは、ちょうど同時期にアメリカで隆起したフュージョン・ジャズと呼応し、このあと街角メンバーの多くは渡米の機会を得て活動の輪を広げていく。

ミルトンも類に漏れず、ジャズ界の名サックス奏者ウェイン・ショーター、キーボード奏者ハービー・ハンコックやブラジル人パーカッショニスト、アイアート・モレイラ等と共同で作品を発表している。

しかしミルトンの全盛期はこの後に来る。78年にリリースした『Clube da Esquina No.2』の「Maria, Maria Maria, Maria Maria, Maria 」が大ヒット、そして次のヒット曲「Cancao da America Cancao da America Cancao da America 」(80)は当時の民主化運動のテーマソングとなり、ミルトンはまさしく「時代の声」となった。この時期ミルトンは映画や演劇の音楽も数多く手掛けている。

81年のアルバム『Cacador de Mim』でもタイトル曲と「Nos Bailes da Vida Nos Bailes da Vida Nos Bailes da Vida 」が圧倒的に支持される。その後も「Certas Cancoes」、「Encontros e Despedidas Encontros e Despedidas Encontros e Despedidas 」(マリア・ヒタがカバー)、「Tema dos Indios」「Bola de Meia, Bola de Gude」などのヒット曲を次々とリリース。

97年頃から持病の糖尿病が悪化するもアルバム『Nascimento』で98年のグラミー賞ワールド・ミュージック部門を受賞する。97年には青年期にパーティ・バンドで歌っていた曲集を集めたアルバム『Crooner』で自らのルーツを振り返る。2000年のジルベルト・ジルとの共作『Gil e Milton』も興味深い作品である。

2003年には最新アルバム『Pieta』をリリース。女性ボーカルに焦点を当てたこの作品ではミルトンたっての希望で、故エリス・ヘジーナの愛娘マリア・ヒタが「Voa Bicho」など3曲を歌い、スタジオ・デビューを果たしている。同アルバムのツアーで03年に3度目の来日公演を行う。2004年中旬には内臓の手術を受けるものの、その後は回復し今ではライブ活動を再開している。

世界中を魅了したミルトンの悠久の音楽は、永遠の時間の中にとけ込んでいる。

♪代表曲
NOS BAILES DA VIDA NOS BAILES DA VIDA NOS BAILES DA VIDA
TRAVESSIA TRAVESSIA TRAVESSIA
MARIA, MARIA MARIA, MARIA MARIA, MARIA
CANCAO DA AMERICA CANCAO DA AMERICA CANCAO DA AMERICA
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