「シコ・ブアルキ
〜 才人はサンバを作って本を書く」

シコ・ブアルキはジャンルを超越した存在、ブラジルが誇る才能である。彼の声や作曲の素晴らしさはもちろん、言葉に対する感性は天才的といえデビュー当時からポルトガル語の天才といわれる。トム・ジョビンも若き日のシコのことを「ブラジルの至宝」と呼んで可愛がった。

1944年リオデジャネイロ生まれ。歴史家の父を持ち、2歳から成人までサンパウロで育つ(9歳から2年間イタリアにも在住)。詩人ヴィニシウス・ヂ・モラエスとは家族ぐるみで付き合いがあり、十代の頃にはサンバを作曲していたという。15歳のころ聴いたジョアン・ジルベルトに衝撃を受け、本格的に作曲をし始める。読書にも親しみ、高校生時代には学校新聞の記事を書いていた。

大学のころから人前で歌うようになったシコは、当時流行りの音楽フェスティバルに曲を応募するようになる。65年に開催されたテレビ局のフェスティバルで発表された「Pedro Pedreiro」は、入賞こそしなかったものの話題を呼び、シングル・リリースされる。この年、舞台『Morte e Vida Severina』の音楽を手掛け、同世代のカエターノ・ヴェローゾ等とも交流を深めていく。

66年にはファースト・アルバム『Chico Buarque de Hollanda』をリリース。「Ole Ola」、「A Rita」、「 A Banda A Banda A Banda 」などの曲は歌詞の美しさ、シンプルかつ奥深いメロディーでたちまちMPBの名曲となり、シコは22歳にして1930年代の大作曲家、ノエル・ホーザの再来とまで言われるようになった。

その後も「Com Acucar com Afeto」、「Noite dos Mascarados」、「Quem Te Viu, Quem Te Ve」、「Morena dos Olhos Dagua」、「Roda Viva」、「Carolina」、「Januaria」などの名曲を生み出し、憧れのトム・ジョビンとは「Sabia」、「Retrato em Preto e Branco」などの名曲を作る。70年代にはミルトン・ナシメントと「O Que Sera」、トッキーニョとは「Samba de Orly」、ほかにも「Acorda Amor」、「Maninha」、「Sob Medida」や「Bye Bye Brasil」といった名曲を世に出していく。

しかしこの頃、社会的テーマを扱うことを使命とするシコの音楽に対し、軍事政権が厳しく干渉。「Apesar de Voce」、「Calice」、「Tanto Mar」などの曲は放送が禁止され、これらを収録したアルバムは回収された。

この影響もあって、映画や舞台音楽、映画や演劇の脚本、寓話や詩集などの執筆など活動の場を広げる。この時期の作品にはサンバ・ミュージカル『Opera do Malandro』(85年映画化。邦画タイトルは「三文オペラ」)があり、トム・ジョビンと共作の映画やテレビドラマのサントラ「 Eu te amo Eu te amo Eu te amo 」(80)や「 Anos Dourados Anos Dourados Anos Dourados
」(86)も有名だ。

87年にアルバム『Francisco』を発表。10年ぶりにツアーを行う。その後のスタジオ収録作品としては『Chico Buarque』(89)、『Paratodos』(93)、『As Cidades』(98)の3作しかないが、多くのミュージシャンとのコラボレーションを精力的に行っている。シコの全作品は、2002年と04年に相次いで発売された2組のボックス・セット『Construcao』(CD22枚)、『Box Francisco』(CD12枚+DVD2枚)に収められている。

その活動の一方、小説家としても3作『Estorvo』(91)、『Benjamim』(95)、『Budapeste』(03)執筆しており、はじめの2作はすでに映画化されている。シコの小説はブラジル以外でも人気があり、彼のファンの一人に、日本でも人気のアメリカ人作家ポール・オースターがいる。

2004年には60歳を迎え、ブラジル全土でシコのオマージュが行われた。ある新聞紙が行った著名人100人に対するアンケート「シコの一番好きな曲」では48曲ものタイトルが上がり、彼の作品の豊富さを裏付けた。

2005年にはブラジルのケーブル・テレビで特別番組が組まれ、シコはトム・ジョビンとの関係やリオのエスコーラ・ヂ・サンバ、マンゲイラへの思い入れなどを語りながら新曲も披露、DVDとして発売される予定だ。また、彼の姪にはベベウ・ジルベルト、娘の夫にカルリーニョス・ブラウンがいる音楽一家でもある。来日は残念ながら一度もない。

デビューから慕われてきたシコ・ブアルキ。ブラジルを代表する音楽家であるとともにブラジルを代表する知識人なのである。

♪代表曲
EU TE AMO EU TE AMO EU TE AMO
A BANDA A BANDA A BANDA
BRISA DO MAR BRISA DO MAR BRISA DO MAR
PARTIDO ALTO
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